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教育課程 概要

教育課程は教養、基礎、専門の3系列で構成され、特に専門系列では気象学、地震火山学、地球環境科学の各分野において、気象業務に密接に関連した専門的な教育が行われています。

[ 教養系列 | 基礎系列 | 専門系列 ]

教養系列

教養系列 科目概要
分野 科目名 選択・必修 期間 概要
人文科学 論理学 二科目以上選択 通年 論理学は、その成立にまつわる歴史的経緯から哲学の一部門とされているが、その適用は自然科学を含め、今日あらゆる学術の基盤を成している。論理学が本校教養科目として設置されている所以である。
本講義では、演繹と帰納、言語の意味と論理などの概念から、古典的形式論理、記号論理と公理系の実際に至る、現在までの論理学の主要な成果を概観したうえで、推論の妥当性の判断や正しい論拠に基づいた議論の構築といった、論理的思考とその表現技術を学ぶ。こうした基礎に加えて、論理演算の電気(電子)的回路としての実装や、論理計算や計算可能性など計算機科学分野での成果など、論理学のいろいろな応用を紹介し、さらに論理学による数学を始めとする諸学の基礎付けの試みとその限界を理解する。
科学史 通年 社会の中で科学技術に依拠した気象業務を担おうとする者にとって、科学を外部から評価する多様な視点や尺度を持つことがますます重要になりつつある。「科学論(Science Studies)」と総称される分野はまさにそのような観点から科学を扱っており、その中で歴史的な手法を用いるのが「科学史」といえる。この授業では、現在とは異なるパラダイムをもつ過去の「科学」の理解をヒントに、われわれの科学観を相対化しつつ深めることによって、そのような視点を育ててしていきたい。またこれに関連して、専門家ではない一般の人々に対して、科学的情報をいかに伝えるかという、科学コミュニケーションの問題も取り上げたい。
文学 通年 主として19世紀から20世紀にかけてのフランス文学のさまざまな作品(翻訳)を読みながら、小説・詩・演劇・思想・批評にあらわれた文学的真実・自我・社会・自然・愛・想像力・倫理・思想・宗教・夢・笑い・戦争・言語などの問題を考えていく。
また、折にふれて、他の世紀のフランス文学作品、さらには日本の文学作品やイギリス、アメリカ、ドイツ、ロシア等の外国文学の作品も扱っていく。
社会科学 社会学 二科目以上選択 通年 社会とは人と人との関係であり、家族や友人関係といった小さなものから、都市や国際社会など大きなものまでさまざまなものがある。社会学はこうしたさまざまな社会を科学的に考察するものである。本講義は、なるべく多くの角度から社会学の基礎的な視点を学ぶことを目標とする。
また、現代社会のさまざまな問題を、多くの視点から捉えて考察することを目指す。
政治学 通年 政治とは何であろうか。政治を学ぶことにどのような意義があるのだろうか。ある政治学者は、「政治とは社会的諸価値の権威的配分である」と定義した(D.イーストン)。それは、どういう意味だろうか。本講では「政治とは何か」という問いかけから始まり、政治制度、そして制度の中で活動する様々な社会アクターの働きについて学び、政治に対する理解を深めていく。
公共経営学 通年 (前期)公的組織における「良い経営」とは、何を意味するのであろうか?この授業の前期では、公共経営及び公共政策に関わる基礎的な理論や知識の習得を目指すとともに、公共に係わる議論や行政組織とりまく環境の変化について考えてゆきたい。
(後期)近年、政府や自治体といった公共セクターの限界が指摘され、市民やNPO、民間企業などと協働しなければならない社会が到来している。この講義では、こうした新しい形での公共経営のあり方について、ソーシャル・キャピタルの概念を中心に紹介しつつ考えていく。
英語 英語A 必修 通年 この授業では、精読と多読の二つの面から英語文献の読解力を養い、併せて気象業務に必要な基本的語彙・表現を習得することを目的とする。授業は「精読」を念頭においたテキストの講読と、「多読」を念頭においた授業外の補助教材リーディングから構成される。「精読」テキストのひとつとして、最初に気象庁の英語版パンフレット類を用いる。それによって業務に関する語彙や表現法を習得し、気象庁の業務を英語で紹介できるようにしたい。その後は、読解力養成という観点から、必要に応じて他にも科学・技術・文化等を主題とした文献を教材として利用する。一方、「多読」では、読む速度と分量を重視し、細部にとらわれず大意を把握する力を養う。
英語B 必修 通年 この授業の目的は、「頭で考えずに」英語を話す感覚を身につけることにあります。そのための最も重要なポイントは、頭の中で思い浮かべた「文字」を読むように話すのではなく、聞き慣れた「音声」を口真似するように話すことにあります。それゆえ、聞き取りの耳を発達させるためにも、まずは発音の練習を重点的に行います。その上で、英語のドラマを視聴しながら日常的な英語表現を学び、さらにその表現を授業の中で実際に使ってみることで体得していくことを目指します。
英語C 必修 通年 本科目は、英語という外国語で書かれ、或る程度の専門性を具えた文献、とくに地球物理関連諸学・気象事業を論じた文献の読解力養成を主要な目標とする。達成を目指す読解力の水準は、4年次の卒業研究や卒業後の業務遂行上、読む必要が生じた文献を必要十分に読みこなせるレベルである。まとまった長さと比較的高い抽象度をもつ文章を素材とし、十分な速度で正確かつ精確に読みこなすためのトレーニングを行なう。教材には、前期は自然科学一般に何らかのかたちで関わる文献を、後期には主に気象業務や地球物理関連諸学に関わる学術文献をとりあげる。語彙の獲得、読解の速度と正確さの達成は言うまでもないが、とくに対象テキストの著者が何を言わんとしているかを的確につかむことに重点をおく。
英語D 必修 通年 本授業の目的は、国際的な場面における活動に必要となる実践的なコミュニケーションの手段としての英語を修得することにあります。そのために、まずはこれまでの英語学習の復習と基礎の確認も兼ねて、日常的な場面における英会話力の再定着化を図ります。その際に発音を重視します。というのも、外国語を話す上で重要なのは、頭の中で思い浮かべた「文字」を読むように話すのではなく、聞き慣れた「音声」を口真似するように話すことだからです。また、その上で英語の視聴覚教材を用いて日常的な英会話を視聴し、さらにその中に出てきた英語表現を教室の中で実践してみることで、英会話力の定着化を図ります。
さらに授業の成果が将来、国際的な気象業務にも生かせるよう、より専門的な英会話の実践にも後半で取り組んでいきます。
英語E 必修 半年 本授業の目標は、英語での報告書・論文執筆、プレゼンテーションなどに必要な基礎を身につけることにあります。そのためにまずは、これまでの英語学習の復習と基礎の確認も兼ねて、日常的な場面における英会話力の再定着化を図ります。そこで発音から再確認し、そして数回は視聴覚教材を用いて日常的な英会話力を定着させます。そのように3年までの教養系列の英語A〜Dで読解力およびコミュニケーション能力を身につけた上で、さらに科学・技術及び業務に関連する英語、そしてその表現方法(論文やプレゼンテーション)について学びます。
第二外国語 仏語I いずれか一カ国語(二科目以上)選択 通年 多様な異文化に対する理解力や、豊かなコミュニケーション能力を涵養する目的で、フランス語を学習する。フランス語は、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語などと並んで、俗ラテン語を共通の祖語とする言語(ロマンス語と呼ばれる)であり、ヨーロッパ(および中南米)の文化を理解するうえで欠かせない。この科目はフランス語初学者を対象にしたもので、文法を中心にフランス語の基礎を学ぶ。後期半ばで文法のテキストを終えた後は、学んだ知識を活用してフランス語のテキストの読解の訓練を行う。並行して開講される仏語Uとあわせて、年度末までには、辞書を参照しつつ、一般的なフランス語の文章が読めるようになることを目標とする。
仏語II 通年 フランス語のDVD教材を用い、反復して視聴することにより聞き取りの能力、会話の能力を高め、また、主に文法の練習問題を行うことにより、フランス語文法の基礎能力を伸ばしていきます。
Tの学習とあわせて一般的なフランス語の文章を読めるようになること、また、簡単な会話の聞き取りができ、簡単なフランス語の会話ができるようになることを目標とします。
仏語III 通年 フランス語T、Uの基礎の上に、文法の基礎知識、読解力、会話力のレベルアップを図ります。
また、テキストにフランスの歴史や文化について記述されたものを用いることにより、フランスの歴史や文化についての理解を深めていくことも目標とします。
中国語I 通年 中国語の発音を習得すること。
基本的な文法事項を身につけること。
また、会話練習を通じて日常の各場面に応じた中国語の表現を学びます。
中国語II 通年 会話や読解の基礎を築くために文法の習得は欠かせない。この授業では、現代中国語の基本について、文法という視点から包括的な理解を獲得することを目的とする。
中国語III 通年 会話や読解の基礎を築くために文法の習得は欠かせない。この授業では、前年度に増して多様な文法現象に触れ、それらの理解によって現代中国語の本質に一層迫ることを目的とする。

基礎系列

基礎系列 科目概要
分野 科目名 選択・必修 期間 概要
数学 微分積分学I 必修 半年 1変数関数の微分法・積分法及び級数の基礎と応用を学ぶ。まず初めに実数について学び、 極限、連続の概念を理解する。微分や積分に関しては、定義をきちんと理解した上で計算が出来るようになることも要求される。
微分積分学II 必修 半年 多変数、主に2・3変数の実関数に対する微分積分法に関する事項を学ぶ。関数の偏微分、様々な重積分といった基本的な計算法を習得し、それを応用できるようになることを目標とする。さらにはベクトル解析に関する基礎的な事項の習得も行う。
線形代数学 必修 通年 線形代数学について講義する。線形代数学はその内容自体が興味深いだけでなく、数学や物理学などの基礎となる分野である。この授業を通して、ベクトルや行列の操作に習熟し、線形空間,線形写像,固有値などの諸概念に親しむことを目指す。
数理統計学 必修 半年 数理統計学を学ぶことにより、確率予報や気象統計などに必要な、確率・統計の考え方を身に付ける。 気象庁の業務として確率予報等を提供していることから、職員が確率・統計を身に付ける必要性は、常人以上に大きい。
この講義では、1変数の確率分布を中心に、確率的変動の概念、標本の考えかた、真の値の推定、統計学的検定等の、基本的な課題を取り扱う。
数学演習 必修 通年 数学系基礎科目である微分積分学と線形代数学についての問題演習を行う。これらの科目を学ぶにあたっては、講義を聴くだけでは不十分であり、実際に自分で手を動かして問題を解くことが必要である。それと同時に、演習の授業時において各自解答の発表をすることにより、他者に対し的確に説明する能力も養う。
物理数学A 必修 半年 物理数学Aでは基本的な線形常微分方程式と線形偏微分方程式の解法を中心に、フーリエ変換・ラプラス変換およびグリーン関数を取り扱う。線形偏微分方程式の解法としては、フーリエ変換やラプラス変換を用いた直交関数展開法を説明する。さらに、気象業務に関係の深い地球物理現象への物理数学の応用例を取り上げながら、小テスト・レポートを実施し、習熟度が低い学生に対しては個人的に口頭試問的な指導を行う。諸君らが今後学ぶ気象力学や地震学等の専門科目を理解するには数学的方法を使いこなせることが不可欠であるから、本講義においては講義内容を理解することだけでなく、実際に数学手法を使いこなし問題が解けるようになることを重視する。
物理数学B 必修 半年 複素関数とその微分・積分の理解と問題解法の技法習得を目指す。定積分の計算および流体力学の2次元問題への応用が到達目標である。
物理数学C 必修 半年 物理数学Cでは気象業務を遂行するために必要な数学技法について取り扱う。物理数学Aで学んだ直交関数展開による線形偏微分方程式解法の発展として、地球に特有な球座標における直交関数(球関数)を中心に講義を実施する。球関数は気象学や地震学等を学ぶ際に重要であり、実際の業務の上でも利用される。さらに、例題として地球物理学に関連する問題、たとえば地球振動・地球磁場・地球内温度分布変化等を取り扱う。なお、球関数を用いて問題が解けることを重視し、円筒関数は知識として理解してもらう程度とする。また、デルタ関数や、統計学でよく用いられるガンマ関数とベータ関数も扱う。最後に、球関数と円筒関数の応用として、さまざまな境界値問題の解法も解説する。
物理数学D 選択 半年 様々な物や事には対称性が存在し、これについて考察することは数学や物理学において重要な意義をもつ。本講義では具体例を通して、対称性を考える際に必要である群論の基本的事項について学ぶ。また、群論における諸概念を理解し応用するための基礎の定着を目標とする。なお、本講義では集合論や線形代数学の基礎知識を前提とするが、必要であれば進度や履修者の状況を踏まえて適宜説明する。
物理学 力学 必修 通年 いわゆる「古典力学」と呼ばれるニュートン力学について学ぶ。ニュートン力学は、われわれが日常接している世界において最も身近で、目に見える物体の運動を扱う物理学として大変重要である。本教科では、はじめに、運動の法則やエネルギーを学ぶ。空間や時間、力や加速度といった物理概念や慣性の法則、力学的エネルギー保存則について理解を深める。また、落下運動など簡単な運動や強制振動も扱う。次に、惑星の運動、中心力や角運動量を学ぶ。運動方程式の座標変換や万有引力、角運動量保存則について理解を深める。最後に、質点系の運動、剛体の簡単な運動、相対運動を学ぶ。重心や重心に関する運動の分離、剛体のつり合いや平面運動・回転、地球の自転の影響などについても理解を深める。本教科において現象を数量化し方程式で表す訓練を行うことは、第2学年以降に学ぶ物理学や気象学、地震火山学、地球環境科学を理解する上においても重要不可欠である。
力学演習 選択 半年 力学は物理学のうちで最も基礎的な分野であり、これを理解することは物理学全体を理解するための第一段階として欠くことのできないものである。力学で取り扱う現象は最も単純で具体的直観的であるが、基礎となる重要な問題を中心に演習を進めていき、このような明確な現象の取り扱いを確実に習得できるようにする。本教科では、はじめに、運動の表し方のための座標・変位、変位の導関数として速度・加速度、力・加速度を用いた運動の法則を扱う。また、単振動に関して調和振動子・エネルギー積分、講義ではあまり触れない束縛運動を通して垂直抗力・抵抗力・張力なども学習する。次に、エネルギー保存則や仕事、非慣性系の運動における慣性力・遠心力・コリオリ力、惑星の運動を扱う。また、講義ではあまり触れない衝突についても学習する。最後に、剛体の力学に関して運動量・角運動量保存則、力のモーメント、慣性モーメント、回転ベクトルなども採り上げる。
熱学I 必修 半年 熱学Tでは、地球上で様々な現象を引き起こす熱の問題を物理的に取り扱う上で必要な熱力学の基礎を学ぶ。また、熱力学の諸問題を通して、物理的な発想および思考の方法を習得し、地球物理系の応用科目へ対応できる学力の基礎を身につける。
熱力学は、力学・電磁気学と共に古典物理学の主要な一角を占めている。熱力学の最大の特徴である「現象論」としての取り扱いは、自然を把握するための段階として不可欠であり、物事を科学的に考え、処理するための基本である。第2学年以降に学ぶ様々な応用・専門科目を理解し修めていく上で不可欠な概念を、わが校のカリキュラムに適合する形で教授していく。熱力学の体系自体は、抽象性が高く、偏微分を主とする数学を駆使するため、高校物理しか学んでいない初学者には取りつきにくく、分かりにくい印象を与える可能性が高いが、適宜具体的な例を地球物理学が対象とする各種現象で提示し解説していくので、しっかりとついてきてもらいたい。
物理学演習 選択 通年 力学・熱学Tの講義と並行して行われる演習教科である。力学や熱学を学ぶ上で、最低限これだけは理解し、使いこなせるようになってほしいと考える事柄を中心に、基礎学力の向上を目的とする。平易で基礎的な物理学の題材と簡単な数学を用いて、物理として本質的なことが理解できることを目標とする。力学分野では、運動、運動量保存則と力、エネルギー、中心力、摩擦力など質点の力学、質点系の力学、つり合い、固定軸まわりの運動など剛体の力学について学習する。熱学分野では、いわゆる熱力学の範疇の演習問題を取り上げ、熱力学第一法則、第二法則、各種熱力学的関数・変数の取り扱いについて学習する。また、ベクトルによる運動の表現や微積分、偏微分、ベクトルの微分、接線ベクトル・法線ベクトル、線積分、近似式など数学的事項についても習熟を図る。本教科では、基本的な内容を重視し、物理的な発想および思考を身につけ、応用科目との連携を目指す。
熱学II 選択 半年 熱学Uでは、熱学Tで学んだ熱力学を元に、地球科学における様々な分野への応用に向けて重要な熱理論の習得を目指す。また、熱学の学修を通して物理的考察をより深め、物理的な考え方や対処法の定着を図る。
熱学Uの前半は、熱力学の拡張として、複数の相からなる開放系を取り扱う。これによって、雨や雪などの気象および地球化学上の様々な反応を理解するための基礎を身につける。後半は、これまでに学んできた現象論としての熱力学のマクロな立場に対して、ミクロの立場から気体の分子運動論をはじめとした内部メカニズムを考えていく。この理論的発展の先には、統計力学の世界が広がっているが、本科目ではその初歩的な導入部までの理論を身につけていく。
地球物理学の様々な分野の基礎を為す本科目を修めることは、応用・専門科目を深く理解するための強力な手掛かりとなり、有益である。選択を強く勧める。
振動波動論 必修 半年 概 要 振動や波動の現象は日常生活のさまざまなところに見出される。また物理学や地球科学を理解するうえでも最も基本的でかつ重要な現象の1つである。この講義においては@振動、波動を支配している方程式、Aこれらの式の解法、Bこれらの解と振動や波動の現象の間の関係、B共鳴、基準振動、分散関係、群速度、波動のエネルギーなどの振動、波動に固有で重要な概念を学ぶ。
学ぶ項目は単振動、減衰振動、強制振動、パラメータ励振、安定平衡と振動、振り子の有限振幅運動と近似解、有限粒子系の基準振動、無限粒子系の振動、フーリエ級数・フーリエ変換、波動方程式の導出と境界条件、ダランベールの解、反射、分散関係、群速度、波動のエネルギーと運動量、平面波、球面波、波動の伝搬、屈折、干渉、回折などである。
電磁気学 必修 通年 大気中のエネルギ−輸送や、リモ−トセンシングなどの理解に必要な『電磁波の基本的な振る舞い』を学ぶことを主な目標にします。『ク−ロンの法則』からはじめて『電磁場の基礎方程式であるマクスウエル方程式』をとおり『電磁波の振る舞い』にいたる『基本的な道筋』をたどります。そのために必要な『最小限の事柄』を『確実に伝える』ことを授業の基本姿勢とします。『基本的な道筋』をたどる過程で、基本原理や基礎仮定から、数学的計算と物理的考察によって、色々な命題が導かれることを学びます。命題の導出を通して、物理学的な『ものの見方・考え方・処理の仕方』を身につけることも目標とします。
流体力学 必修 半年 大気や海洋など流体は、流れる性質をもつ物体である気体と液体の総称であり、気体も液体も莫大な数の分子の集まりである。分子の集まりとみれば流体は多体系の力学として扱わなければならないが、分子的な構造は無視して連続体として扱うのが流体力学である。本教科では、粘性を無視した理想化された流体である完全流体の力学や渦運動に特に重点をおき、終わりの数講では粘性流体の運動も扱う。はじめに、粘性、応力や圧縮性といった流体の性質や運動、質量保存の法則や運動量保存の法則など基礎方程式について学び、完全流体の運動の記述方法や運動方程式について理解を深める。次に、2次元の非圧縮・渦なしの流れや渦運動を採り上げ、流れの関数と速度ポテンシャル、複素速度ポテンシャル、渦定理や渦度の方程式について学ぶ。最後に、粘性流体の流れに関して、粘性流の運動方程式、レイノルズ数、力学的相似則、低レイノルズ数の流れなどについて学習する。
弾性体力学 必修 半年 3年生の必修科目である地震学Tを視野に入れ、力を受けると線形変形し力を除くともとにもどる固体の弾性的性質について解説する。歪場、応力場、構成則、実体波と表面波の伝播、一点に働く力による変形等を理解するために必要な弾性論の基礎を学ぶ。歪と応力およびそれらの座標変換、歪の適合条件、テンソルと座標変換および主軸、歪と応力の構成関係(フックの法則)、歪エネルギーと弾性定数の数、等方弾性体の弾性定数、重ね合わせの原理、相反定理、弾性体の変形、平面問題とエアリーの応力関数、曲げとねじり、運動方程式、実体波の反射・屈折、表面波(レイリー波とラブ波)と分散、球座標と円筒座標を例として直交曲線座標とそれにおける運動方程式、球面波、無限弾性媒質内の一点に働く力による変形を取り扱う。
物理学実験 必修 通年 物理学実験の目的は、実験を通して物理学をより深く理解することにあり、器械類の使用方法を学び、実験方法を習得して測定されたデータを正しく解析し、実験値の不確かさなどを適切に評価する能力を養うことにある。さらに実験レポートの書き方を習得することも実験目的の重要な点であり、実験方法、実験結果とその考察を簡潔に要領よく記述し、それらを第三者に正確に伝える技術を習得する。また本物理学実験では、レポート提出後に、実験目的、使用器械、実験方法、解析結果および考察を効果的に説明する発表用資料を作成し、口頭発表の方法についても学ぶ。共同実験者と協力し議論しながら実験を行い、諸課題を計画的に積極的に取り組む態度を養う。
物理学特論 選択 半年 気象学や海洋学などの地球科学の深い理解に役立つと思われる、解析力学と統計力学と量子力学の基礎方程式である『正準方程式』と『ボルツマン関係式』と『シュレデインガ方程式』を学ぶことを主な目標とします。『基礎原理』から『基礎方程式』にいたる『基本的な道筋』をたどります。そのために必要な『最小限の事柄』を『確実に伝える』ことを授業の基本姿勢とします。通常の力学との違い、例えば『解析力学では、時間大域的な運動法則』、『統計力学では、多粒子集団の取り扱い』、『量子力学では、常識的ではない物の在り方』を学ぶことを通して『より豊かな自然観』を身につけることも目標とします。
情報科学 電子工学 選択 半年 気象の現場では各種の気象観測システム、情報処理システム、通信システムが導入され、業務遂行のための中核システムとして運用されている。これらのシステムは、高度なエレクトロニクス技術を用いて構築されており、現場においてシステムを利活用することは勿論、将来、本庁や地方中枢においてシステムを計画、整備、管理する際は、この技術を理解しておくことが重要となる。
ここでは、「電気回路」「電子回路(アナログ回路)」「同(ディジタル回路)」「信号処理」の分野から、これらの業務を行う上で必要な基礎知識として有効なテーマを選び、基本的な考え方から気象業務への応用まで、講義を中心に授業を進める。このとき一方的なレクチャに終わらず、ディスカッションや演習も交えて理解を確かなものにする。
情報通信 必修 半年 情報通信技術は、気象業務を遂行するために不可欠な要素の一つである。気象庁では、世界各地の気象データを収集し、解析・予測することで天気予報をはじめ、注意報・警報など様々な気象情報を作成し、これを国内外の気象機関や防災機関、報道機関等に伝達している。こうしたデータの収集や処理は、通信システムやコンピューターネットワークなしには成り立たたず、その基盤となる通信工学やネットワーク技術の知識が業務を計画、遂行していく上でも重要になってくる。そこでアデスを始めとするデータ通信部門ほか気象庁の各部門において、将来、学生が指導力を発揮して業務を進めるのに必要な基礎知識として、情報通信・情報ネットワークの分野から主要なテーマを選択し、気象現場での実用例なども交えながら講義する。
情報科学実験 選択 半年 気象業務におけるデータの収集・利用・提供にあたって、情報通信システムは大きな役割を果たしている。ここでは、講義で行う「情報通信」の理解を一層確かなものとするため、情報通信技術を支える基礎となる電子工学の理論や考え方を実験によって確認する。代表的な電気回路、電子回路(アナログ・ディジタル)について、実験書をもとに各自で回路を組み上げ、特性の測定・解析を行う。またC言語を用いたPIC制御実験では、プログラムによる機器制御に関する理解を深める。あわせて、将来の調査・研究活動や気象の現場での作業に広く応用できるよう、測定器やデバイスの取扱いも含めた計測技術、データの整理・考察に対する習熟も図る。
情報処理演習I 必修 半年 気象庁の日々の現業業務で、適切な防災気象情報の提供には、適切かつ迅速にデータ解析や予報を行う必要があり、この処理はコンピュータを用いることが避けられない。
この状況を踏まえ、「情報処理演習T」では、コンピュータによるプログラミングの基本的事項を身につけるとともに、コンピュータリテラシーを習得する。なお、プログラム言語は、気象庁の現業ルーチンでも用いられているFortran90(95)を取り上げる。
このことにより、2年生以上で履修する「情報処理演習U」「情報処理演習V」への足がかりとなるだけでなく、卒業後、業務遂行上の最低限の知識を得ることを目標とする。
情報処理演習II 選択 半年 気象業務で必要なソフトウェア開発を念頭に、その基礎となるC言語の利用について演習を通して学ぶ。実行環境としてUNIX(Linux)を使い、その操作方法についても併せて習得する。最近ではCを基に機能拡張したC++やJAVAなどの言語を使用した開発も多くなってきており、その基礎としてもC言語の重要性は高い。プログラム技術の習得には、実践が不可欠であり自分の手を動かさない限り身に付かない。他のプログラムを手本にしても構わないが、その意味を押さえながら自分で作成することが重要である。C言語の基本的な文法や概念を理解し、簡単なプログラムが自分で作成できるようになることを学習目標とするが、アルゴリズムの考え方はすべてのソフトウェア開発に通じるものであり、単なる文法の学習にとどまらず、プログラミングセンスを養うことを意識して演習に取り組むこと。
データ解析 必修 半年 気象庁では、日々の身近な気象データや地震火山、海洋、地磁気、衛星の観測データのみならず各種数値予報モデルデータや予報検証データ・災害情報データなど、様々な種類・形式の膨大なデータが扱われ、長年にわたり蓄積されてきている。それらのデータの中から有用な情報を取り出すためには、様々な角度からデータをまとめ、分析することが不可欠である。
この科目では、そのために必要となる統計解析の具体的手法について学ぶ。1年前期の「数理統計学」で学んだデータやその特徴の記述、スペクトル解析、統計的推定と検定、相関と単回帰分析等の基本的な統計理論について、計算機を用いて演習を行うことで解析手法を身につける。最後にこれらの手法を使って、各自入手した気象観測データなどを対象に統計解析を行い、この科目を締めくくる。統計解析ソフトとしては、「エクセル」や無料配布されている「R」の利用を想定している。
データ解析演習 選択 半年 気象庁では、日々の身近な気象データや地震火山、海洋、地磁気、衛星の観測データのみならず各種数値予報モデルデータや予報検証データ・災害情報データなど、様々な種類・形式の膨大なデータが扱われ、長年にわたり蓄積されてきている。それらのデータの中から有用な情報を取り出すためには、様々な角度からデータをまとめ、分析することが不可欠である。
この科目では、2年後期の基本的な統計解析手法を扱った「データ解析」の発展的内容にあたる解析手法について学ぶ。重回帰分析、判別分析、主成分分析、クラスター分析、時系列解析等について、計算機を用いた演習を行うことにより具体的な統計解析手法を身につけ、将来、業務に関連するデータ解析を行えるようになることを目標にする。統計解析ソフトとして、主に「R」の利用を想定している。
数値モデル入門 必修 半年 理工学の分野に登場する様々な現象は、偏微分方程式によってモデル化されることが多い。そのような偏微分方程式を様々な初期・境界条件の下で厳密に解くことは、ごく少数の例外を除けば、一般的には不可能である。そこで、解の振る舞いを知るために、元の偏微分方程式を何らかの手法により離散化し、計算機を用いて近似解を得るという方法がとられる。
この科目では、まず、数値計算の誤差について学び、連立一次方程式の解法、微分方程式の中で最も基本的な2階常微分方程式の境界値問題、2階常微分方程式の固有値問題、1階常微分方程式の初期値問題、Poisson方程式の境界値問題、熱方程式の初期値・境界値問題について、それら近似解を得るのに必要とされる数値計算法について学ぶ。これらの基本的な数値解法は、今後より複雑な偏微分方程式系(例えば、数値予報モデルの支配方程式)の各種の問題を解く際の十分な基礎となりうるものである。
化学 化学通論 必修 通年 大気中微粒子による気候や人体への影響、温室効果気体による地球温暖化、酸性物質による酸性雨や海洋の酸性化など化学物質と関連した地球環境問題において、化学に関する知識は不可欠なものとなっている。本講は化学の基礎を習得することを目的として開講される。通年で開講される本講の前半には構造論とエネルギー論といった化学の基礎について学習する。これらの大半は高校ですでに学んだことであり、高校化学の復習とともにさらに発展させ「大学の化学」を学習する。後半では化学が関係する気象業務で最も重要な「測る」ための種々の分析化学的手法についての原理と実際の分析について学ぶ。化学の基礎の学習と化学分析の実際とを結びつけるため、同時に開講される「化学実験」の分析原理、手法の説明および結果の解説も本講の中で行う。
化学実験 必修 半年 「化学実験」の目的は、基本的な実験操作の学修とともに、化学量論、化学反応などの化学の基礎についての理解を深めることにある。本実験を通して基本的な器具の取り扱い方や実験を安全に行うための注意事項を知り、正しい実験マナーを習得する。同時に、実験を効率的に進めるために予習を十分に行い実験時の操作手順を理解するとともに、実験スケジュールを自身で構築する、いわば円滑に業務を実施するための必要な事前準備を実践的に体得する。さらに、実験データを正しく記録・整理し、それに適切な解析処理を行い、結果を得る習慣を身につける。結果に対して十分な考察を加え、第三者を納得・理解させうるレポートの書き方の基礎を習得することで、業務における「報告」を実践的に体得する。

専門系列

専門系列 科目概要
分野 科目名 選択・必修 期間 概要
気象学 気象学概論 必修 通年 本講義では、気象学を体系的な理解と、防災気象業務に携わる職員として最低限理解しておくべき気象学の基本の習得を目的とする。具体的には、以下の3項を身につけることに重点を置く。
@ 日々起きている気象現象と物理学の知識を関連付ける
A 気象データからどのような気象現象が発生しているかを読み取る
B 読み取った気象現象をわかりやすく伝える
気象学を本格的に学ぶためには、流体力学や熱力学など物理学を身につけておく必要があるが、気象学の基本習得を目標としているので、習得済みの物理学の知識を用いながら、気象現象の理解を進める。
また、気象現象に対するイメージを持つために、日々の実例や顕著現象を使って天気図解析や気象データ解析などの作業実習を取り入れる。また、日々の気象現象に目を向け、作業実習だけでなく、自分で疑問点を調べた点について解説を行う時間も設ける。
気象基礎演習I 必修 半年 地上気象観測、ゾンデによる高層気象観測に加え、気象衛星、気象レーダー及びウィンドプロファイラによる気象観測、これら今日において基本的、かつ重要な気象観測の原理やその方法を学ぶ。また、各種観測資料や天気図などの予報支援資料等、様々な気象資料の入手・表示方法を演習で体験しながら学ぶとともに、それらの意味を学ぶ。さらに、天気図に現れる低気圧や高気圧の種類や特徴、それらにあてはまる最も単純化された力学関係とその意味について、天気図のデータや等値線から値を読みとりつつ体験的に理解していく。
高学年になったときに気象学分野の学修効果を高めることを目的とした項目が選ばれている。また、数学・物理など、並行して学んでいる事項が気象学に役立つことを知る機会も設ける。必要な知識の習得段階で概要説明を聞き、演習を行うこととなり、理解できない部分が残るが、演習を通じて得た気象のイメージとともに温めることで、後の専門的な気象学の学修の原動力とする。
気象基礎演習II 必修 半年 本演習では、1年後期の「気象基礎演習T」に引き続いて天気図に慣れ親しむとともに、現実の気象データに触れて、1年で学んだ「気象学概論」や2年で学ぶ基礎系列諸科目の知識がどれだけ有効であるかを確認する。
具体的な演習目標は以下の通りである;
i) 気象に必須の概念を数式だけではなく、その物理的な内容がイメージとして理解できるようにする。
ii) 気象・気候の解析に必須なデータやツールに慣れ親しんで、初歩的な解析を行う。
i)は気象の理解の基礎をなすものであり、ii)は、気象・気候の研究では標準的なデータセットや気象解析に特化した作図・解析ツールを使うことが多く、3年以降に学ぶ気象・気候関係の専門科目や卒業研究ではこれらに習熟していることが必須であることから、本演習の目標として掲げている。なお、単にツールの使用方法を習得するだけではなく、これまで学修した理論との比較・検討を行って理論の理解を深めることが重要である。
気象力学I 必修 半年 気象力学は天気現象や気候に関係のある大気の運動を力学的に扱う学問の総称であるが、本校における講義では他教科との兼合いで主として乾燥大気の総観規模以上の運動を扱う。大気は回転する地球の表面に重力により拘束された(地球半径に比べて薄い)流体層として存在し、放射や降水に伴う加熱や冷却がエネルギー源となってその運動が維持される。このため、ある程度の規模以上の運動では重力と鉛直圧力勾配が釣り合う静力学平衡が良い近似で成り立ち、更に中高緯度では地球の自転による見かけの力であるコリオリ力と水平圧力勾配が釣り合った地衡風とよばれる流れが卓越する。地衡風の鉛直方向の変化は静力学平衡と状態方程式を通じて温度場の水平勾配と関係し、このことと地球規模でみた加熱・冷却の平均分布が中高緯度における大規模運動の大枠を規定する。また、加熱の非一様性に起因する大気の傾圧性とコリオリパラメータの緯度依存性は大気の渦運動の在り方を規定する。気象力学Iでは、こうした大気運動の基礎となる諸原理・諸概念について学ぶ。
気象力学II 必修 半年 気象力学IIでは、気象力学Iで学んだ基礎の下に大気波動の概要と温帯低気圧の力学について学ぶ。通常の流体力学で学ぶように大気中には弾性波動である音波が存在するが、その他にも浮力を復元力とする(内部)重力波やコリオリ力の影響を受けた慣性重力波、境界に捕捉された慣性重力波であるケルビン波、そしてコリオリ効果(惑星渦度)の緯度依存性が復元力となって生じる波であるロスビー波等が存在する。こうした大気波動の特性を線型論の範囲で扱う。また、気象力学Iで導いたプリミティブ方程式系に更なる近似を施して中緯度の高低気圧を扱うのに適した方程式系である準地衡風近似方程式系を導出し、そこから導かれる温帯低気圧の構造と力学について学ぶ。準地衡風方程式系は、中立な線型波動としてロスビー波のみを含む方程式系になっているが、そのような系に生じる力学的な不安定波動(傾圧不安定波)が中緯度における高低気圧の発生と構造を説明する。
大気物理学I 必修 半年 大気現象に関連する大気の熱力学(大気熱力学)と降水過程の物理(雲微物理)を学ぶ。
講義前半の大気熱力学は、力学とともに気象の根本をなすものであり、ここで学ぶ諸概念は今後のすべての気象・気候の基礎となる。大気熱力学の学修内容は6単元に別れ、1.乾燥空気の物理で熱学の基礎を復習し、2.湿潤空気の物理で現実大気の熱力学を学ぶ。3.断熱図では気象学的熱力学図が備えているべき特性を理解した上でエマグラムを学ぶ。4.大気の安定では静的安定・不安定に触れ、5.混合と対流では、等圧混合で霧が形成される場合や初歩的な対流理論を学ぶ。
後半の雲微物理では、7.雲粒の形成でエーロゾルから雲粒が核形成によって生じ、次いで、雲粒が拡散凝結によって成長していき(8.水滴の凝結成長)、やがて雲粒同士の衝突併合を経て雨滴が形成され、落下中に蒸発を受けながら地上に達するまでの諸過程を述べる(9.暖かい雨)。0℃以下の場合の降雪現象は、10.氷晶の形成・成長で学ぶ。
大気物理学II 必修 半年 この講義は大気境界層について学ぶために置かれている。大気境界層とは地表に近い大気の層で高さはおよそ2km程度である。人間が生活しているのはこの層であること、また大気全体を駆動し様々な天気現象を起こすエネルギーは全てこの層を通して上層に運ばれていることのため、大気境界層について理解を深めることが気象学を学ぶ上で極めて重要である。本講義では大気境界層の特殊性とその原因となる物理過程を境界層内の乱流運動や熱と水蒸気の乱流輸送を記述する方程式を導き理解した上で、実際の地表面での熱輸送について学ぶ。また、一見複雑でランダムに見える大気境界層や乱流に実は美しい相似関係があることを学ぶ。更に境界層内での興味ある現象(局地風やヒートアイランド現象)について学ぶ。
大気物理学III 必修 半年 気象業務において放射が関連する分野は、多岐にわたっている。本講義では、大気の放射過程に関する基礎知識の学習に重点が置かれ、講義終盤に、現在の業務で用いられている大気モデルの放射計算の概要が教授される。地球大気中での放射の果たす役割を理解するために、放射過程に関連する基本的な物理法則、太陽放射・地球放射の実際、気体分子による赤外線の吸収やエーロゾルなどによる光散乱過程の基礎を学ぶ。また放射伝達の計算手法、地球大気の熱収支や気象業務で重要性を増している大気のリモートセンシングへの応用について学ぶ。さらに現在の気象業務で用いられている大気モデルで考慮されている長波長放射と短波長放射の計算方法の概要を学ぶ。
気象観測ネットワーク 必修 半年 気象観測は気象業務にとって必要不可欠な基盤(実況監視や気候監視、気象情報、数値予報初期値としての利用等)である。気象庁は大気の3次元構造とその時間推移を捉えるためにアメダスや地上気象官署による地上気象観測網やゾンデおよびウィンドプロファイラーによる高層気象観測網、および降水の監視のためのレーダー網など様々な観測網を構築し運用している。これらのネットワークを構成する個々の観測装置の測定原理と応答特性などの諸特性を物理学の知識に基づいて理解する。また、観測環境が観測データに及ぼす影響とその過程を大気物理学IIで学んだ大気境界層の知識に基づいて理解する。更に観測データの品質管理の重要性とその手法について学ぶ。
地球物理学実験 必修 通年 本実験の目的は以下の通り
1) 大気・海洋の現象を実験室内で再現する。回転水槽、回流水槽、ゲッチンゲン風洞、垂直風洞、連続成層水槽を用いて、流体現象の可視化、速度測定、温度測定、圧力測定を行い、流体や微水滴が示す気象、流体力学、雲微物理等の諸現象の解析を行う。更に、低温実験室で雪結晶の成長や淡水や海水の凍結実験を行い、それらの現象の理解を深める。なおこれらの流体・低温実験では実験前に前週の実験結果についてのプレゼンテーションを行い、発表技術の向上を図る。
2) 太陽放射スペクトルや地表面アルベドなどを測定し、地球大気の放射過程に重要なエーロゾルの光学特性や地表面の反射特性などについての理解を深める。
3) 地震計は揺れる地面に設置してなぜ地動を測ることができるのか。理想的な不動点は存在せず、ある一定の条件下で近似的な地動を測定している(地震計の「特性」)。地震計の測定原理と特性について実物の地震計を用いて学び、実際の解析(変位の測定や地下構造推定)を行なうことによって地震計のデータの利用についての理解を深める。また、GPS測位の原理についても学び、その測位精度や誤差について体得する。
総観気象学 必修 半年 総観気象学は、顕著現象を含むメソ気象の実況監視及び予測という観点からは、背景場を適切に認識する手段として欠かせない。一方、季節予報等の観点からは、大気の大局的な状況の変動をもたらす素過程を解釈する手段として重要である。総観天気図に現れる擾乱の構造と、それに伴う大気運動のメカニズムを、理想化/典型化して学ぶ。また、総観規模擾乱の挙動を支配する背景として、惑星規模の大気構造や大気循環との関わりについても学ぶ。これにより、総観場を表わす気象資料に各種擾乱のパターンを適用して大気の総観規模構造を読み取ると共に、その場で支配的な力学を解釈する方法を修得することを目的とする。メソ気象の背景場の学修という意味でメソ気象学T・Uの土台であり、複雑多様な大気を臨機応変に解釈するための基礎知識の学修という意味で気象解析予測論Uの基礎となる。
メソ気象学I 必修 半年 気象は、降水や雲が関わると急変することがある。このため、気象災害等をもたらすメソ気象については、実況監視及び予測の意義が大きい。実況監視・予測を適切に行うには、短時間内に各種の気象データを大気の支配法則に則して有機的に結びつけて判断する直観力(勘)が必要である。メソ気象学Tでは勘を養う基礎固めとして、メソ気象のメカニズムを典型化しつつ、極めて自然な物理的素過程の組み合わせとして理解する。また、その理解に基づく思考をアメダスや地上観測等による局地天気図に適用することにより、気団内に生じたメソ気塊の成因を推測したり、その場を支配する力学的状態を推測したりする手法を単純化して学ぶ。湿潤大気の熱力学の観点から気団内に生じたメソ気塊の成因を推測する考察法を学び、力学的な観点からは詳細な事例解析や文献類を参照しつつ、メソ気象に適した力学体系を抽出するとともに、それが典型的に表われた理論モデルを学ぶ。併せて、保存量を応用した考察法も学修する。これにより、実況監視・予測のためにも、数値予報等の技術開発における比較基準設定のためにも、観測資料を適切にメソ解析・解釈する手法の入口を修得する。
メソ気象学II 必修 半年 豪雨・豪雪などの現象をもたらすメソ対流系は、近年、観測手段と雲解像非静力学数値モデルの発達により、それらのメカニズムが明らかにされつつある。本講義前半では、メソ対流系を理解する際に必須である方程式系の導出と各種不安定について学んだ後、後半でこれらの方程式系や概念による雷雲及びそれに関連する諸現象の理解を目指す。
講義前半の方程式系の導出では、スケール解析の詳細を講義し、理論計算、数値計算の基礎となる方程式系が如何なる近似で導出されるのかを詳述する。
後半では、現業雲解像数値モデルでの対流パラメタリゼーションと雲物理過程について触れ、更に、時間が許す限り、雷や2年の雲物理で触れられなかった汚染物質をはじめとするエーロゾルの除去過程について講義する。
気象解析予測論I 必修 半年 現代の天気予報は数値予報に技術的基盤を置いている。予報業務では、数値計算の結果のみに留まらず、これをさらに加工し、具体的な天気予報や防災気象情報への翻訳を可能とする「予報支援資料」を用いている。また、観測資料を利用して数値予報と現実とのずれを検知して予測を調整すること、あるいは、必要な気象実況分布や災害の確度を把握、診断する際にも、観測資料を加工した資料を用いる。気象解析予測を適切に行うには、これらの技術体系を理解すること、また、個々の技術の原理や得られる資料の特性及びその限界を知っておくことが欠かせない。
この教科では、数値予報を用いた予測の基本事項、各種支援資料の作成方法、特性、実際例などの基礎を学ぶ。また、これを通じて気象解析予測技術や作業における人の関わりについても理解する。
気象解析予測論II 必修 半年 通常の気象学では、気象擾乱について典型化したり単純化したりした構造やメカニズムに重点が置かれる。しかし現実大気では、概念的には別種の構造やメカニズムが複合したり中間的な様相を示したりすることが多く、例外的な様相が顕れることも珍しくない。このため、気象の実況監視や予測にあたっては、典型化された概念を組み合わせたり拡張したり、またその程度にさじ加減を加えたりする必要がある。そこで当科目では、天気図や数値予報などの気象資料を典型化された構造・メカニズムを組み合わせて分析し、それらを拡張したり統合したりすることによって資料から多くの情報を読み取り根拠ある推測をする方法を、実例を通して学ぶ。さらにアメダスや地上観測の稠密さをもってしてもデータ不足の否めないメソ気象に関しては、観測データを有機的に関連させつつ解析や監視を行う考え方を学ぶ。思考回路を常に見直しつつ発展的に修正する姿勢を伝えるよう努める。
数値予報論 必修 半年 日本の数値予報業務が開始されてから50年以上の年月がたち、数値予報は気象庁の天気予報・天候予測における基幹技術となるまでに発展してきた。気象庁の現業数値予報モデルには、地球全体を予報対象領域とする全球スペクトルモデルや、日本周辺を予報対象領域とする非静力学格子点モデルなどいくつかあるが、どのモデルも、現象に対する理解の深化に伴うモデルの精緻化、計算機の進歩による高解像度化などにより、それらの予報精度を着実に向上させてきている。
この科目では、全球スペクトルモデルの力学フレームに焦点をあて、時間差分スキームの特徴、高速フーリエ変換の仕組みを習得し、スペクトル法の原理、β平面上の等価順圧スペクトルモデル、球面上の非発散順圧スペクトルモデル、球面上の浅水スペクトルモデル、球面上のプリミティブスペクトルモデルを通して、数値予報(モデル)がどのような方法で構築されているかについて学ぶ。
データ同化 選択 半年 データ同化とは、各種の最適化理論を用いて、観測や実験データを数値天気予報モデルなどへ取り込み(同化し)、またモデルの結果を修正する技法である。すなわち、時空間的に断片的にしか得られない観測や実験データを、数値モデルを用いて補完する技法でもある。本教科では、代表的な手法の一つである最適内挿法、より高度な手法である変分法やカルマンフィルタについて、基礎的な知識を学ぶ。はじめに、データ同化における統計学的な推定法として、線形最小分散推定および最尤推定について学ぶ。次に、静的なデータ同化の手法として、統計的な推定に基づく最適内挿法および少し高度な3次元変分法を採り上げる。変分法では拘束条件の付加についても触れる。最後に、動的なデータ同化手法として、4次元変分法およびカルマンフィルタについて学習する。4次元変分法におけるアジョイント方程式の導出、アンサンブル予報を利用した誤差の近似についても触れる。
気象学演習 必修 通年 学修と修得には段差があって、知識を得て分かったつもりでも、いざ実行しようとすると詳細な点で分かっていない点が数多くあることに気付くものである。 気象学演習では、主として大雨等の災害に係わる気象に関して総観天気図や数値予報等の資料を読み取ったり、総観解析やメソ解析を行ったり、また実況監視や予測に係わる思考回路を理論面から確認したりする。さらに、個別の事例を解釈するには典型化された観方が必要であるが、同時に典型的モデルとの差異およびその影響についても考察する必要があることを体験する。これにより、これまでに学修した気象学の知識が咀嚼できているか、また応用力として活用できるまで修得できているかを確認したり、不足点を補完したりする自己研鑽の手法を学ぶ。
地震火山 地震火山学概論 必修 通年 地震学と火山学の入門的な内容を学ぶだけではなく、地震・火山現象の理解の基となる地球内部の構造と運動を学ぶ。初めに、地球の形状について知り、その変化を測る測量や地殻変動の観測の手法、地球重力とその観測や分布について学ぶ。地球内部の温度分布や地殻熱流量の測定と地域的分布など地球熱学に関することや、地球磁場の測定や古地磁気など地球電磁気学の基本的事項についても学ぶ。それらの成果に基づき解明されてきたプレートテクトニクスについて、地震・火山現象とのかかわりを中心に概説する。最後に、地震学については、地震発生と地震波による地球内部構造の推定、火山学についてはマグマ発生から噴火までのプロセスなどの基本的事項について解説し、災害についても触れる。
地震学I 必修 通年 地震とそれに関連する現象を理解するために、地震学の基本的理論および地震観測とその解析手法、プレートテクトニクス、地震活動の特徴等について解説する。地震の発生および地震波の伝播の基礎となる地震動の測定や弾性波の理論、地震発生のメカニズム、断層運動、震源に働く力について学ぶ。さらに、固体地球科学の考え方の基盤となるプレートテクトニクスや地震波を用いて推定される地球内部構造について学習する。地球の歴史と人類の地球史観の変遷についても述べる。また、地震・地震動の大きさ、地震の時間的・空間的分布、各地域の地震活動の特徴、地震予知、緊急地震速報、余震確率、地震活動指数について学ぶ。なお、地震に伴う現象として地殻変動と津波の発生についても触れる。
地震学II 選択 半年 第3学年の「地震学T」で学んだ内容を踏まえ、震源過程解析や地震波トモグラフィ等で明らかになった最近の地震像や地球内部構造、地震活動解析・地震予測モデルといったより高度な概念、最新の地震学の知見を反映した緊急地震速報などの応用技術について学ぶ。また、気象庁の地震業務における自動処理システムの位置づけについて触れ、地震のシステムを構築するにあたってどのような知識が必要となり、どんな概念を援用し、どんな開発プロセスを採用することが重要であるかについても述べる。さらに今後の気象庁業務において一層重要となってくるであろう地震学の社会科学的側面 ―防災やサイエンスコミュニケーション等― についても触れる。
火山学 必修 半年 気象庁で行われている火山業務について理解するために、火山に関する基本的事項を解説する。はじめに、火山現象およびマグマの発生・移動、噴火のメカニズム、マグマの化学組成と物理的性質について講義する。さらに、火山活動状況を把握するために行われる火山性地震および微動の観測、地殻変動観測、電磁気観測、熱観測、遠隔観測等の観測手法とそれら観測結果の解析手法について解説する。また、噴火のタイプ、火山噴出物と堆積物、多様な火山災害、火山災害予測図の作成と活用、噴火のエネルギーと規模、火山体の構造と発達史、火山地形について学ぶ。最後に、火山噴火予知とその体制、気象庁が発表している噴火警報・噴火警戒レベルについて解説する。
地球電磁気学 選択 半年 本講義は地球に関る電磁気現象を2つのトピックに分ける。まず、地球大気に関る電磁気現象を扱う。地球の大気は天気現象の中心舞台である対流圏とその上空で対流圏と一体化して変動する成層圏・中間圏に別れるが、そのさらに上空には太陽紫外線によって大気が電離された領域が広がっている。この領域は天気現象の舞台の上方境界として接しており、2つの領域はお互いに影響しあっている。このような観点から、地球大気の電離された領域について議論をする。次に、地球の電磁気的な内部構造を取り扱う。特に、地表で観測される電磁気現象と地震や火山噴火との関連について触れる。地球電磁気学は気象庁の他の分野と違い未だに基礎的な研究開発が必要である分野であることから地球内部電磁気学や宇宙科学の最前線のトピックを取り交ぜて将来への提言を考えてもらうような講義をしたい。
地震学演習 必修 半年 本演習は気象庁地震業務の解析技術に関するものであり、地震活動・火山活動を正しくとらえ、それを自分なりに理解して解説できるようになることを目標とする。そのためにはまずデータがどのように収集・蓄積・作成されてきたかについてきちんと知ることが重要である。第3学年で学んだ「地震学T」で得られた知識であるが、実際のデータを元に震源決定・発震機構解の決定などについて自らの手で処理を行なうことによってデータの精度や誤差といったものを体感し、そのデータから何を語ることができて何を語ることができないのかについて実践的に学ぶ。演習終了時にはいずれかの地震・火山活動についてまとめてもらい、プレゼンテーションと討論を行なって理解力を試すものとする。
地球環境科学 地球化学 選択 半年 地球化学は、地球の現在の姿を明らかにするのみでなく、地球で過去に起こってきたことを「化学」という手法を用いて解き明かそうとする学問分野である。それらの理解の向上こそが将来予測の精度を向上につながっていく。本講では地球表面のうち海洋に焦点をあてるが、海洋を理解するためにはそれと接する陸域、大気圏さらに海洋底をも理解する必要がある。加えて、地球の最も特徴的な生物過程の理解をなくしては地球海洋の化学を説明することはできない。前半では地球表層環境システムの概要とそれ支配する化学原理について理解する。後半では、海洋と陸圏・大気圏および生物圏との相互作用について理解する。あわせて、下記参考書には含まれない最近の温暖化や海洋の酸性化に関する研究成果を交え授業を進める。
海洋物理学 必修 通年 海洋の諸現象について、その時空間スケールを決めている重力加速度・水深・地球自転の角速度・緯度・地球の平均半径といった基本的な物理量の単位と数値を基礎として導入し、波と流れの性質について講義する。また、海水の密度や結氷温度といった基本的な物性について論じた上で、海洋の温度と塩分及び密度の分布や海氷と氷山について講義する。さらに、潮汐と潮流に関する基礎について論じ、想像を絶する巨大な破壊力で災害を引き起こす波浪、高潮、津波、湾セイシュ(副振動)、異常潮位等の諸過程について講義する。そして、近年、喫緊の社会問題となっている沿岸海域から外洋海域までの地球環境の保全や異常気象の観測・監視・予測において理解しておく必要のある、エッジ波・ケルビン波・陸棚波・惑星ロスビー波、赤道域の波動、内部波といった海洋の波動とエクマン吹送流・地衡流調節・湧昇・表層大循環・深層大循環・日本近海の海流といった海洋の流れについて講義する。以上のことに基づいて大気海洋相互作用及び地球温暖化と海洋酸性化、エルニーニョ等の諸過程について講義する。
気候システムI 必修 半年 地球温暖化に関する政府間パネル第4次報告書では気候システムの温暖化は疑う余地がなく、20世紀後半の温暖化は温室効果気体の増加による可能性が高く、温室効果気体の排出が続けば今後もその影響が大きくなっていくことが報告されている。この地球温暖化を理解するためには、気候は何によって決まるのか、どのように維持され、変化するのか、また変化してきたのか、人間活動が気候にどのような影響を与えてきたのか、将来への影響はどのように予想されているかなど、気候システムと呼ばれる分野の学習が必要である。また季節予報の理解のためにも気候システムを学ぶことが必要である。このため、この授業では気候師テムを構成しているサブシステム、そのエネルギーバランス、大気大循環、成層圏とオゾン、、水循環、エルニーニョと大気海洋相互作用、地球温暖化の実態、地球温暖化の将来予測について学ぶ。
気候システムII 選択 半年 気候システムTでは気候システムや地球温暖化に関する基礎的で全般的な事項を学んだが、気候システムUでは、気候システムの力学的な理解を重点に置く。このため気候システムとって重要な大気や海洋の大循環、大気―海洋の相互作用などについて、それらを記述する方程式とそれらの解法を学生自ら演習の形で学ぶ。その際数式の物理的、定性的理解に重点を置くことによって、気候システムTで学んだ事項について、たんに覚えるだけでなく、方程式や他の現象とのつながりを理解できるようにする。授業では、熱帯を含む大気大循環、定常ロスビー波の力学、大気海洋相互作用の力学などについて講義、演習を行う。
セミナー セミナー 選択 半年 学生が、自主的に授業の題目もしくは研究のテーマを定め、指導に適任の教官がえられた場合に開講される。
卒業研究 卒業研究 必修 通年 大学校における一般的、専門的教育の基礎の上に、調査および研究能力を養うことを目的とする。研究課題をまとめて論文とするとともに、年二回の研究発表をおこなう。

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